自然利子率が上昇していた場合の株への影響を考察

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ここ最近、自然利子率が上昇しているのではないかという議論が注目を集めており、26日からの今年のジャクソンホール会議でも議題に上るのではないかという憶測もあります。
そこで今日はこの場合の株価への影響について考えてみたいと思います。

自然利子率の議論が出てきている背景

まず、自然利子率とは日本銀行リサーチラボによると以下のようなものです。

自然利子率

自然利子率とは、経済・物価に対して引き締め的にも緩和的にも作用しない中立的な実質金利の水準のことである。自然利子率は、中央銀行にとっては金融政策スタンスが引き締め的か緩和的かを判断する際のベンチマークの一つとなることから、理念的には、これを推計し、現実の実質金利の動向を自然利子率との相対的な関係で捉えていくことが重要である。

FRBがこれだけ急ピッチに利上げを行ってきたにも関わらず、米経済は底堅く、来る来ると言われていたリセッションは今だに来ないまま、ウォール街でもゴールドマンサックス等はリセッション確率を引き下げていますし、それどころか先日のアトランタ連銀が発表した2023年3Qの予想実質GDPは5.8%という驚きの数字になっています。名目かと思いますが、インフレ率を除いた実質の数字です。

そのため自然利子率が上がっているのではないか、という議論が出てきています。

7月12日のWSJの記事「ウォール街に追加利上げ待望論」では「エコノミストらによれば、市場金利が自然利子率を上回った場合にのみ、金融引き締め状態になる。・・・今年になってから一部のFRB当局者は長期自然利子率を3%以上と予想してきた。」との記載もあります。

実際のところは、自然利子率の推定値にはかなり幅があり、こちらのNY連銀の推定では2つのモデルを使用した上で2023Q1でそれぞれ1.14%と0.58%になっており前述の水準とはかなり差があります。
実態は分からないものの、仮に3%以上の水準になっているとすると、パウエル議長がよく言及している「higher for longer(より高く、より長く)」が今後の金利の在り方として可能性が高いように思えます。

米国10年債チャートは長期トレンド転換の形状

そこで思い出されるのが米国10年債利回りのチャートです。

2020年3月の0.3%を底にして上昇に転じ、2022年9月以降、2018年11月の高値3.25%(黄色のライン)をブレイクしてきています。これは1981年以降の長期のチャートですが、昨年秋からこれをみるたびに「もしかして長期のトレンド転換が起こっているのではないか…!?」と気になっていました。

さらに今年2023年3月に再度3.2%あたりまで落ちて安値を確認後、再度上昇していることから、「カップアンドハンドル」の形成しています。

カップアンドハンドルはテクニカル分析でのチャートパターンで、ハンドル部分形成後上昇する可能性が高いとされています。

出所:dailyfxカップアンドハンドルとは?チャートパターンと手法をプロが解説

先進国の米国で今後金利が上昇していくことは起こりにくい、という考え方が一般的ですが、チャート形状は逆に見えます。そして後からもっともらしい理由付けが出てくるのが市場だな、と改めて思います。

自然利子率上昇なら高い金利でも株は意外に下げないかもしれない

一般に金利が上昇すると株にはネガティブになり、10年債利回りのチャートが示唆するように金利が高い状態が続くと株価には下落圧力がかかることになります。
株に大きく投資することは控えて、比較的高い金利が望める債券に株よりも低いリスクで投資することが正しい投資行動のように思えます。

しかし、自然利子率との関係で見ていくとどうでしょうか。

自然利子率と株価の関係

自然利子率=実際の金利の場合:経済はおおよそ均衡状態にあり、金利は景気に対して中立的。この場合、自然利子率の上昇が株価に与える影響は限定的。

自然利子率<実際の金利の場合:金利の上昇が企業の資金調達コストを高め、消費や投資を抑制し、株価にネガティブな影響を与える可能性。

自然利子率>実際の金利の場合:金融政策がより景気刺激的になり、株価にポジティブな影響を与える可能性

自然利子率が高い場合は、金利の上昇に対してもある程度耐性があることになります。
去年から今年にかけて金利を上げても株価の下落は一時的で急回復、というこの1年の状況が理由付けされます。

今後も金利が高い状態が長く維持されても、株価が落ちないあるいは上昇する、ということも考えられ、それはある意味バラ色のシナリオのように見えます。自然利子率についての議論は今後も行われていくと思いますので、それがジャクソンホールで行われるのか、あるいは他の場面も含めて状況を見ていきたいと思います。

<参考>
ロイターコラム:ジャクソンホール会議で期待される自然利子率解明のヒント

READ  全世界株とS&P500どちらに投資すべきか~30年の年成長率の比較
MISA

MISA

第1子出産後、保育園に入れなかったため2011年から投資を開始。3児の母でワンオペ育児中。FXからスタートし徐々に時間を使わずにお金を生んでくれる資産の構築にシフト。インデックス投資、太陽光発電、海外不動産、国内不動産、個別債券、海外保険、FX。マイクロ法人運営。
保有資格:証券外務員1種、米国証券外務員、AFP、宅地建物取引士

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