iDeCoのメリットとデメリットを踏まえた入るべき人・入らなくても良い人は?

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将来に向けて個人で資産運用をしようと考えた時に、国が用意した制度としてiDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)があります。いつも並べて比較されることが多い両者ですが、今日はそのうちのiDeCoについて、そのメリット・デメリット、そしてメリットが大きくなる人とデメリットが大きくなるタイプの人について考えたいと思います。

iDeCoの対象者は以前は1号被保険者、企業年金のない2号被保険者だけだったのですが、2016年から企業年金のある2号被保険者と3号被保険者に対象を拡大してから加入者が増加しています。
こちらは約2021年までの図ですが、その後2023年3月時点では約290万人の加入者がいます。
第1号~第3号は以下のような区分けになっています。

  • 第1号被保険者:自営業者、学生など
  • 第2号被保険者:会社員・公務員
  • 第3号被保険者:専業主婦(夫)
iDeco加入者数の推移 出所:iDeCo公式サイト

/https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/kanyusyanosuii20210701

このように加入者数の増加がみられるiDeCoですが、どのようなメリットとデメリットがあり、どのような人が入るべきで、どのような人は優先度を下げるべきなのでしょうか。

iDeCoのメリットは節税効果

積立時:掛金が全額所得控除

これがNISAにはない、iDeCo独自の最大のメリットだと思います。
iDeCoではその掛け金全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となっています。


iDeCoに毎年拠出できる限度額はそれぞれ被保険者のタイプと、第2号被保険者の場合は所属先が行っている企業型確定拠出年金や確定給付企業年金に加入しているかどうかによって変わってきます。

厚生年金のない自営業者は掛け金が多く月額6.8万円拠出できるようになっており、会社に企業年金がない会社員や専業主婦(夫)の場合は月額2.3万円になっています。
所得税率は累進課税になっているのでメリットはその人の所得税率によって変わり、所得の高い人ほどその効果は大きくなります。
第1号被保険者以外は掛け金の金額自体が大きくありませんが、所得控除による節税は確実に取れるメリットです。

出所:iDeCo公式サイト

運用時:運用益が非課税

通常は金融商品を購入すると運用中の配当や利子等の運用益に20.315%課税(源泉分離)されますが、iDeCoではこれが非課税になります。

運用益に対する税金が非課税と聞くと効果も大きくないような印象を受けますが、運用期間が長期になってくると複利の影響でその差は大きくなってきます。

こちらは月額2.3万円を拠出して30歳から65歳まで3%で35年間運用した場合のシミュレーションです。
青色の線が運用時の非課税合計額で、約150万円近くになります。

  • 35年間の運用益: 7,255,378
  • 運用益に対する非課税額:35年間の合計 1,473,930円 非課税
出所:SBI証券iDeCo かんたん節税シミュレーション

SBI証券 iDeCo かんたん節税シミュレーションサイト
https://go.sbisec.co.jp/prd/ideco/about_simulation.html

受取時:一定額が非課税

こちらは資産の受け取り方法によって所得の種類と適用される控除の種類、計算方法が変わってきます。

  • 全額をまとめて一時金で受け取る場合:退職所得控除
  • 分割で年金として受け取る場合:公的年金等控除

がそれぞれ受けられ、所得税が軽減されます。
それぞれに控除の枠がありますが、受け取り方にはポイントがあるので詳しくは別記事にしたいと思います。

その他のメリット:自己破産をしても手元に残るお金

確定拠出年金は差し押さえ禁止財産に分類されます。仮に自己破産をしても、破産手続きで債権者にとられることはなく、60歳以降になれば受け取れます(国税滞納分は除く)。もし銀行に預金として預けていたままであれば債務と相殺されてしまいますので、これは老後に向けた安心材料になりますね。

iDeCoのデメリットは資金拘束

60歳まで資金が拘束される

iDeCoの最大のデメリットで注意点は、資金が60歳まで拘束され、引き出すことができない点です。これは年金を目的としているので、国民年金・厚生年金の保険料として納めたお金が引き出せないのと同じです。
従って掛け金を決める時の注意点としては、60歳までの期間に必要となるお金、例えば結婚・出産費用や子供の教育費、自宅の購入資金などを除いた金額を設定する必要があります。

また、途中で思いがけず人生計画が変わるもあり得ますのでそれでも困らない金額で設定しておいた方が良いでしょう。早めにリタイアして別のことに取り組みたい、その間の生活費に充てたいと思ってもすぐに受け取ることはできません。この辺りの人生計画の変更に対する柔軟性は低い制度ですね。

少額だが手数料がかかる

大まかに以下のような手数料がかかってきます。

  • 「国民年金基金連合会」への手数料:2,829円(加入時)
  • 「国民年金基金連合会」への口座管理手数料:105円(毎月)
  • 「事務委託先金融機関(日本カストディ銀行)」の費用:66円(毎月)、等

節税メリットでカバーできる金額とは思いますが、NISAにはないような細かい手数料が設定されています。

メリットが大きい人とデメリットが大きい人

大きくまとめると、掛け金が所得控除になるメリットと、60歳まで資金が拘束されるデメリット を天秤にかけて判断するイメージで良いと思います。

iDeCoに入るメリットの方が大きくなる人とデメリットの方が大きくなってしまう人はそれぞれ以下のようなタイプが考えられます。

色んな考え方がありますが、20代の若い方はまだ所得もそれほど高くない場合は所得控除のメリットを生かしきれない場合もありますし、年金構築よりも自己投資にお金を使った方が 生涯のQOLを含めたリターンが高くなると思います。

デメリットが大きいタイプ
  • 留学や資格等の自己投資を優先した方が人生の充実度が高くなる段階の人
  • 収入が不安定、またはまだ若く人生の収入・支出見通しが立ちにくい人
  • いざという時の資金に余裕がない人
メリットが大きいタイプ
  • 所得税率が高く所得控除メリットが大きい人
  • 資金に比較的余裕に余裕がある人
  • 人生の大きな出費(結婚・出産、子供の教育、自宅の購入等)の見通しが立っている人

現役世代は親世代の仕送り+自分の年金作りを同時に期待されている

残念な事実ではありますが、今回改めて調べている中で厚生労働省の以下の資料を見て、今の年金制度設計がなぜこうなっているのか、現役世代の負担感についてある種の納得をしてしまいました。

厚生労働省が2023年1月に「年金制度基礎資料集」というものを出していますが、その説明によると「かつては親と同居してその子供が自分の親を養っていたが、段々と若者が都市部にサラリーマンとして移転するようになって自分で親を養うことが難しくなった・・・そこで社会全体で高齢者を支える公的年金制度を整備した」、という趣旨の記載があります。率直に言えば、「仕送り」を社会化したものが年金だそうです。

出所:厚生労働省「年金制度基礎資料集」2023年1月

常々、「若年人口が減っていく中で、減少する若者世代が高齢者世代を支えるという年金制度の設計自体に無理があるのは自明、自分の年金は自分で用意しないと成り立たない」と思っていましたが、そもそものコンセプトが仕送りだったということである種の残念な納得感を得ました。

さらに、現役世代はiDeCo等の制度を使って自分年金を用意することを期待されているということは、すなわち親の年金(仕送り)は払ってあげながら自分の年金も用意するという二重の負担を期待されているということになりますね。

現役世代としては辛いですが、個人としてできる対策はそうないですね。制度を活用して老後のお金を悩みを減らせるように今から資産形成をやっておくのみです。

<参考>

厚生労働省「年金制度基礎資料集」2023年1月

https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000894794.pdf

READ  自営業者の年金は国民年金基金とiDeCoのどちらを選ぶべきか
MISA

MISA

第1子出産後、保育園に入れなかったため2011年から投資を開始。3児の母でワンオペ育児中。FXからスタートし徐々に時間を使わずにお金を生んでくれる資産の構築にシフト。インデックス投資、太陽光発電、海外不動産、国内不動産、個別債券、海外保険、FX。マイクロ法人運営。
保有資格:証券外務員1種、米国証券外務員、AFP、宅地建物取引士

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