先日、日興アセットマネジメントが信託報酬0.05775%の全世界株式インデックスファンド「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」を新規設定することが発表されました。
これまでeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の0.1133%が最低価格だったのでほぼ半減されています。
どちらも販売手数料はなしなのでこの信託報酬の安さは目に留まります。
出所:時事通信
私たちは日常的に買い物をする時には、似たような商品ならば手数料が安い方が良い、と考えますよね。投資信託の場合はどうでしょうか。
目次
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投資信託の繰り上げ償還リスク
投資信託には繰り上げ償還というものが存在し、運用方針に則った運用が困難になった場合、当初設定されていた償還日よりも早く償還されることがあります。投資信託は残高にかかわらず、投資家向けの運用報告書作成や監査などで一定の固定費がかかります。資産総額の規模がが一定額を下回った場合はこの費用を賄えなくなるので商品としての取り扱いをやめるということですね。
この時に損失を抱えていればそれが確定し、利益が出ていれば税金を支払うことになります。資産形成の計画に大きく影響してしまいますね。
この繰り上げ償還は意外に多く行われていて、投信資料館によると2023年2月は22本の追加型株式投資信託が償還、このうち9本が繰上償還ということです。月次で並べてみても毎月約半数が繰り上げ償還で以外に多く行われていることが分かります。
- 2023年2月:22本中9本
- 2023年1月:17本中8本
- 2022年12月:34本中25本
出所:投信資料館
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の繰り上げ償還基準は?
投資信託が繰り上げ償還の可能性が出てくるのは30億円~50億円を下回ってきた時と言われており、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)の場合は、目論見書では10億円を下回った時、となっています。
この投資信託は話題になっていますし、類似商品が非常に人気がありますのでこの金額を下回る可能性は基本的にないと思われます。したがって繰り上げ償還の心配をする必要はないと思いますが、残高の伸びをしばらく観察して一定規模以上になったこととそれまでの運用成績を確認してから本格的に検討対象にしようかと思っています。
Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)は日興アセットマネジメントの肝いり商品
運用会社である日興アセットマネジメントにとってこの商品がどのような位置づけかうかがい知れるデータがあります。
2022年10月末の運用会社別の純資産総額ランキングで見るとeMAXISシリーズを運営する三菱UFJ国際が1位で107,017億円、日興AMは7位で約半分の53,041億円です。
出所:日経新聞
しかも2018年からの時系列でみると、三菱UFJ国際はかなり急激に残高を伸ばし野村AMを抜いて一位に躍り出ているのに対して、日興AMは2021年から2022年にかけて大きく残高を減らしています。他の運用会社も直近は残高を減らしており、三菱UFJ国際の一人勝ちの状況です。
出所:日経新聞
2024年には新NISAが始まります。
そのタイミングで新たに積立を開始・追加する方々が多いでしょうし、新NISAの趣旨からして一度積立を開始したら数十年にわたって保有する方々が多いでしょう。その前に人気商品を作っておければ大きく残高を伸ばして挽回するチャンスですから、ここまで大胆な引き下げに打って出たのでしょうね。
肝いりの商品でしょう。
日興AMにとってこの商品の損益分岐点は残高数千億円と言われているようですから、さてどうなるか、引き続きウォッチしたいと思います。